こんにちは。アメリカ、コロラド在住のパウエル由美です。ヴィーガン/プラントベースで3姉妹の子育て中、 三女は現在生後2ヵ月となりました。今回のコラムは、私自身の3回の妊娠・出産の経験と、コーネル大学プラントベース栄養学で学んだ知識から子育ての始まりでもある“妊娠期”の食事について。
戸惑いの多かった妊娠期
8年前、第一子を妊娠したのは、プラントベースに食事を移行しだしてすぐの頃。まだ栄養学は独学でしたが、プラントベースの食事にしたことで便秘解消、冷え性改善、貧血も無くなり疲れにくく、重かった生理痛も改善するという、嬉しい経験をしたばかりでした。
しかし、妊娠期や子供の食事にもプラントベースの食事が良いのか?栄養面で心配になったのです。プラントベースでの妊娠期の情報があまり見当たらず、周りでプラントベースの人もいなかったので、夜な夜なネットで、気になる栄養素についてや、経験談などを検索していたほどです。
第一子の妊娠期は、暑い時期のつわりで、匂いに敏感であまり食べられない日々を送り、その後は食べづわりで「フライドポテトが食べたい」などの欲求が出るように。さらに「唐揚げが食べたい」とも急に思ったのです。元々、プラントベースの食事を選ぶようになった理由は、夫に「ヴィーガンって健康らしいよ、一緒にヴィーガンになって長生きしよう」と誘われて、試しに私もやってみよう!と始めたのですが、夫と一緒にヴィーガンについて学んでいくと、健康面での良い効果もある事の他に、畜産業に置かれる動物達の深刻な状況や環境問題への影響を知り、ショックを受けました。
そのような理由からもヴィーガンを選択したのに、「鶏の唐揚げが食べたい」という欲求が出た自分に戸惑い、悲しくなったのです。周りからは「プロテインはしっかり摂らなきゃ!」「食べたいと思ってるってことは身体が必要としてるんだよ!」など、心配されアドバイスももらい、と葛藤の多い妊娠期でもありました。
妊娠中にも安心して食べれる!
その後、プラントベース栄養学を本格的に学び出し知識もつけ、美味しい料理方法、プラントベースで唐揚げも作れる!などという事も学んで、美味しく心地良くプラントベースでの生活ができるようになっていきました。第二子、第三子の妊娠期では、上の子達のお世話もあり忙しい毎日でしたが、食事面に心配のない元気な妊婦生活でした。年齢は重ねていってますが、血液検査や妊娠糖尿病の検査では数値等も良くて、トラブルもほとんどない妊娠期を過ごせ、食事のおかげを実感しました。3人の子供たちも、プラントベースで健康に育っています。
今年は、主催しているベジママ勉強会でも、妊娠された方が多いのですが、皆さん「プラントベース栄養学を知れてよかった」と、口を揃えておっしゃっています。自信を持ってプラントベースで心地良く妊娠期を過ごされている様子を見られるのは、嬉しくなります。
とは言っても、プラントベースの食事が妊娠期にも良いというのはどういうことか、気になりますよね。一番気になる、タンパク質はどうなのでしょうか。
次女を出産したニューヨークの病院食ではプラントベースを選べま
タンパク質は必要だけれど心配ご無用!?
確かに妊娠期のタンパク質の推奨摂取量は上がります。大人のタンパク質摂取量は体重1kgあたり0.8gと言われていますが、妊娠期には、体重(妊娠前の値)1kgあたり1.2〜1.56Gと、普段よりもタンパク質の推奨摂取量は多いです。アメリカでも、産婦人科の先生から「タンパク質をしっかり摂ってね」と言われます。しかし、タンパク質=お肉。である必要はありません。
妊娠中は、中期〜後期とタンパク質だけでなく推奨摂取カロリーも増えます。ですので、プラントベースの食事でも、タンパク質豊富な豆類なども食べていたら、食事量を増やすだけで自然とタンパク質も多く十分に摂れるのです。そして、動物性食品のように飽和脂肪やコレステロールは含んでいません。
日本では「体重増加を気をつけて」という声掛けが多くあるようで、食べる量を制限する妊婦さんもいるようです。 妊娠中に太るからと制限をして必要な量を食べなくなってしまうのは、赤ちゃんの成長にも悪影響となってしまいます。 しかし植物性の食事だとお腹いっぱいに満足に食べられて、タンパク質もしっかり摂れ、必要以上の体重増加にもなりません。
さらに、肥満だけでなく子癇前症、高血圧などの予防にも繋がり、便秘やむくみなどのマイナートラブルとも無縁になりやすく、快適に妊娠期を過ごしやすくなります。そして、驚きの研究結果によると、母親の腸内環境が整っていることで胎児の腸内細菌にも良い影響があり、赤ちゃんの自己免疫疾患を発症するのを防ぐのに役立つとまで言われているのです。
Photo by Bonnie Kittle on Unsplash
最新栄養学を取り入れているニューヨークの産婦人科医パドマ・ガーベイ医師は、
「アメリカ大学の婦人科医学会でも、“妊婦はプラントベースの食事でも良い”と言われていますが、様々な観点から妊娠の問題を見ると、“妊婦はプラントベースの食事をとるべきだ。プラントベース食は妊娠中にも最適だ”と言えます」
と、お話されていました。
なぜジャンクフードが食べたくなる?
もう一点、妊娠期の脳の仕組みについても、興味深い話がありました。
私たちの人間の体は、進化論の観点から生物学的には、1000年、もしくは1万年前の祖先からも大きく変わっていないそうです。長年の氷河期を生き延びてきた人類ですが、 妊婦は不足しがちな食物を、通常時以上に身体は取り入れ保持しようとします。そして、これは現代の私たちもその傾向を持っているのです。
ですので、原始的な欲求として、これまで食べた経験のある高カロリー、高脂質、高塩分のものを「また食べたい!」という欲求が突如現れることがあるのは、当たり前の妊娠期の傾向となります。
しかし、「食べたいと思ったものは身体が欲しているんだから食べた方が良い」のでしょうか?
このようなカロリーを保持する傾向が高まる妊娠期に、氷河期の頃とは違って現在の一般的な動物性食品や加工品が多用されている高カロリー、高塩分、高脂肪の食事を欲求のままに食べていると、様々な妊娠期のトラブルが発生しやすくなってしまいます。
私が妊娠期に「唐揚げを食べたい」と思った理由もこの脳の仕組みなのか、と腑に落ちました。
妊娠期に突然、動物性食品や高カロリーのものを食べたい!と思う欲求が出た場合は、本能がちゃんと働いてる、と認めてあげられると、気持ちがラクになるのではないでしょうか。そして、自分を責めることはせず、栄養学の知識をつけたり、ヘルシーなプラントベースでの調理法を知って、美味しくストレスフリーに、健康に!妊娠期を過ごしてほしいと思います。
妊娠中は運動も大事!元気にハイキングもしていました
心地良いプラントベースでの、妊娠期、子育てを応援しています。
次回もお楽しみに!
文・写真/パウエル由美
米コロラド州在住、3姉妹の母。ヴィーガン/プラントベース歴10年。コーネル大学プラントベース栄養学修了。ベジママ勉強会オンラインサロン主宰。
@veg_yummy @vegmamasalon