サステナブルのその先へ  再生可能な食のあり方を皆で考えるイノベーティブキッチン「8go」

2025年5月2日に待望のグランドオープンとなった東京・八重洲にオープンしたリジェネラティブレストランの「8go(エゴ)」。

100年にわたり東京駅近辺の街おこしを牽引してきた東京建物と、星付きレストランなどで腕を奮い『red-U35』をはじめ、さまざまなコンテストでの受賞歴をもつ新進気鋭の若手シェフ・野田達也シェフがタッグを組み、”梅結び”という縁起物を意味する新会社「プラムノット」を設立し、新たな食の発信基地をスタートしました。

 

野田シェフがプロデュースするメニューは“リジェネラティブ”をテーマにしており、食を通じて未来へのインスピレーションが感じられる空間となっています。

個人的にも注目している、最新の食のクリエーション空間である8goをレポートいたします。

 

五感をくすぐり、食べるという日々の行為から社会を考える料理たち

 

ランチとディナーで異なる二つの顔をもつ8go。

 

 

ランチはグルテンフリー、ラクトフリー、ハラル、ヴィーガンなどに対応しながら、カフェスタイルで気軽に誰もが楽しめるようにエンドウ豆由来のパテやバンズのヴィーガンハンバーガー、玄米パンのピザ、季節の野菜を使ったグルテンフリーのパスタなどを提供。カジュアルでありながら、美しくこだわりの感じられるメニューは、彩り、香り、食感、口内調味を楽しませてくれるものばかりです。

 

 

旬野菜たっぷりのパスタには、エディブルフラワーがかわいいフレッシュサラダもついていて満足度の高いものでした。

ヴィーガンのハンバーガーは、マクロビオティックxヴィーガンの私にとってもはや肉、という味で口直ししたくなるくらい衝撃でした。きっとお肉好きな方も気づかないかもしれません。

 

 

ディナーは「ネオ・タパス」を掲げ、日本の食材をつかったガストロノミー小皿料理をジャパンクラフトなどのペアリングで提供しています。

 

 

椎茸のかさにクリームソースが入り、軸のカリカリ食感と旨味が口に広がるグリル料理。

美しいカブのカルパッチョや、キャベツを1/4まるごとステーキにして、お野菜のペーストでお皿を彩り、味の変化を楽しめる一皿などメニューの多種多彩さ。おいしさはもちろん、そのホスピタリティの高さ、見た目の斬新さや美しさに驚かされます。

使われている椎茸は、森林保全のために間伐の未利用木材から生まれた木質バイオマスで熱エネルギーを作り椎茸栽培に取り組む「森のめぐみ研究所」のもの。

葉物野菜はすぐ近隣の京橋にある人工光型植物工場で作る気候変動や輸送負荷、生産者の後継者問題などのリスクの問題解決をする「PLANTX」のもの。

藻✕泡盛粕で育てたAlgaleXの旨味シーズニングである『うま藻』などを使用しています。

 

 

肉や魚料理もありますが、ジビエであったり、環境やアニマルウェルフェアに配慮しながら再肥育された経産和牛、海洋資源や環境を守りながら漁業に取り組む生産者から直接仕入れた魚介類など、いずれも持続可能性を意識した食材を使用しています。

クラフトビールやオーガニックワイン、こだわりリキュール、ノンアルコールドリンクたちと一緒に楽しめる内容です。

 

 

食後や、カフェタイムのスイーツには、植物性たまごパウダーの『UMAMIEGG』を使ったヴィーガンのフィナンシェやクレームブリュレなどもあります。コーヒーやティーはタップからセルフでサーブする楽しさの要素も。

 

 

プラントベースミルクのラテや腸内細菌の研究者と共同開発した腸活ドリンクなども用意されています。

 

 

食材以外にも、同じ八重洲エリアの老舗から譲り受けた廃棄予定だった器達や「ARAS」の、樹脂とガラスで作られた新素材のお皿を使用。手や目に触れる一つ一つに“未来にやさしい”という8goが掲げるキーワードを感じることができます。

 

科学×料理

 

併設する「GIC Tokyo」(Gastronomy Innovation Campus Tokyo)は、さまざまな分野の方との実験場であり、共創の場となっています。

食にテクノロジーを掛け合わせ、新たなものを生み出したり、気候変動など環境変化や社会課題の解決策を模索する場でもあります。フードテックという言葉も、今や産官学が積極的に取り組むようになりました。

科学者と料理人のコラボレーションのように、異分野との越境、共創による新しい価値の創造を目指しています。ヒトモノxコトを繋ぎ合わせて価値を創造する。わくわくが止まりません。

 

 

GIC Tokyoには、面白い機械が色々あります。

3Dフードプリンタや減圧蒸留機、高圧をかけながら蒸すアプローチができるデリソフターや、たとえばクリアなコンソメなどが作れる遠心分離機。フリーズドライ機や全自動調理器、減圧調理器、液体窒素など、通常ではキッチンにはない科学機器が数多く設置されています。料理や開発に携わる方は試してみたい時には申請すれば誰でも試作などきるようになっているそうです。

 

タパスのメニューにも、これらのテクノロジーを活用し、人参やカブの皮を乾燥させたシートや、野菜やパスタまでペースト状にして新たな食感のフュージョン料理などを生み出しています。

 

GIC Tokyo東京建物のチャレンジ

 

今秋には、食の大学院とも言えるガストロノミーイノベーションキャンパスを始動する予定だそうです。

ガストロノミーとは、美食学、料理を中心として芸術、歴史、科学、社会学などのさまざまな文化的要素を考察する総合的な学問のこと。

スペインのサンセバスティアンにある食の大学院、研究室であるBCC(バスクカリナリーセンター)の教育プログラムが受講できたり、BCCが新設するGOe(グローバルオープンエコシステム)との関連施設でもあります。東京を世界一のリジェネラティブシティにするべく、さらにこの先の未来に向けて、チャレンジをしていくそうです。

 

自然を守り、自然なものをいただくことが絶対であると思います。しかし、この先の地球やその上に暮らす生き物たちの未来には、東西南北の結び目の東京だからこそ、メッセージングとアクションをする必要があるのかもしれません。

 

このままでは持続可能とは言えない段階に来ていると言われています。

私たちはほとんど誰もが毎日食べます。食べるという行為には、私たち人間のエゴが背中合わせ。食べ物が私たちの口に入るまで、関わる人たちと、さまざまなプロセスを経ていることを忘れがちです。

しかし、今起きている社会問題には私たち人間の食が大きく関係することに気づき、持続可能な地球のためにできることを考え、取り組んでいく必要があります。

 

8goでおいしく楽しく食べながら、そんなことを肩肘張らずにふわっと気付けたら、きっと未来は明るいに違いありません。食はアート、コミュニケーションツール、教育、遊び……、さまざまなことを包括しているのだからもっと愉しんでいけたらいい。食事をいただきながら野田シェフや維吹シェフを見かけたら、ぜひお話を聞いてみてください。

 

 

イノベーティブキッチンとして、さまざまな分野の方たちとの共創をする8go。ソニーのベンチャー企業が開発した「録食」の体験場であったり、提供するメニューには、社会や環境問題に取り組む企業や生産者のものを積極的に採用し、共創することを大切にしているそうです。

レストランは食べてお腹を満たす場所にとどまっていては、もはや持続可能であるとは言えない時代です。その最先端をいく8goに足を運んでみると、きっと気づきやヒントが得られるに違いありません!

 

8go

住所:東京都中央区八重洲1-4-16 八重仲ダイニング地下2階

定休日:土日祝日

営業時間:ランチ / カフェ 11:00~17:00 (LUNCH L.O. 14:30)

ディナー 17:30~23:00 (L.O. 22:30)

https://8go8go&go.jp/3

Instagram:@8go_tokyo

 


写真・文/千葉芽弓(ちばみゆみ)

ベジフードプロデューサー/ Tokyo Smile Veggie主宰

「日本の伝統とナチュラルVEGANフードを未来に繋ぐ」をキャッチフレーズに、健康や環境、フードロスなど社会問題の解決や、食の多様性への対応のためのカフェやレストラン、宿泊施設の持続可能なメニュープロデュースや商品開発・コンサルティングならびに教育・普及啓蒙活動を行う。食を通じた復興ならびに地域創生事業、レシピ開発、食養生や食育・料理セミナーやパーティケータリング、ライター、メディア発信、イベント企画など幅広く活動している。

ホームページ:https://www.vegemiyu.tokyo/

Instagram:@vegemiyu

 

◆「Tokyo Smile Veggie」~トーキョーにベジなおもてなしを

https://tokyosmileveggies.com/

 

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