この度、「意外と知らない日本茶のこと」というテーマで6回にわたり連載記事を書かせていただくことになりました正垣克也と申します。
私は2020年4月に夫婦で神奈川県川崎市の登戸に「お茶と食事 余珀」というプラントベース×オーガニック×グルテンフリーの日本茶カフェをオープンしました。このカフェを始めたのは、プラントベースの食事の必要性を感じ、もっと広まれば良いなという想いと、日本茶が日本人にあまり知られていない (ように感じた) のはもったいない、と感じたからです。
今はカフェで日本茶を扱っているので、真剣に日本茶のことを勉強する毎日ですが、元々お茶農家さんでもお茶屋さんでもなく、お茶業界で働いていたわけでもありません。お茶業界が長い専門家が業界内から見た日本茶というよりは、消費者の感覚にも近い、業界の外からの視点、プラントベースなお茶好きから見た日本茶、という感じで気軽に読んでいただければ幸いです。
「お茶と食事 余珀」の店内
日本茶を飲むと健康になる?
少し前から海外では抹茶ブームが続いていますが、日本茶ブームのようなものも国内で数年前からありました。自分の周りでも何となく盛り上がっていて、多くの人に日本茶が認知されてきていると思っていたのですが、お客様と話をしていると、いわゆるそこまで“お茶好き”ではない人たちには、都内にお茶カフェが沢山できているということすらあまり知られていないということが分かりました。どうやら自分の周りにいるお茶好きの人たちの間で盛り上がっていただけで、まだまだ日本茶は一般的には浸透していないようです。
かく言う私も日本茶に興味を持ち始めたのは6年ほど前で、それほど長いわけではありません。昔は毎朝コーヒーを手で挽いてコーヒーマシンで淹れて飲んでいたほどのコーヒー好きで、ハンドドリップやコーヒーのことを勉強したいと思ったこともありましたが、コーヒーではなく日本茶を勉強することになりました。
コーヒーは既に流行っていて多くのお店があったので、へそまがり気質を発揮し、他の人がやっていないことをやりたいという気持ちがあったのと、ちょうどその頃、茶道や日本文化に惹かれ始めていたと同時に、オーガニックや健康のことにも興味を持ち始めていたのです。
私が健康を意識し始めて日本茶にも興味を持ち始めたように、多くの健康効果が期待できるというのが日本茶の魅力の一つだと思いますので、健康という視点も含めてプラントベースを実践されている方、プラントベースに興味がある方にも非常に親和性がある飲み物だと思います。ぜひ日常の習慣として日本茶を取り入れていただきたいと思います。
埼玉県狭山市 奥富園さんの茶畑
前置きが長くなりましたが、そんなわけで今回はお茶と健康のことについて。
実際に日本茶を飲む習慣ができてから、体感として良い変化がありました。以前は、毎年決まったように季節の変わり目に風邪を引いていたのですが、日本茶を飲む習慣ができてからは全く風邪を引かなくなり、風邪を引きそうな気配すらしなくなったと言っても過言ではありません。日本茶好きの方とお話しした時にも同じようなことを仰っていたので、この「風邪を引かない」という感覚は自分だけではないようです。
とはいえ、健康に良いから日本茶を飲んでいる、というのはちょっと違う気がしていて。嗜好品として美味しく飲め、リラックスできる上に健康に良い、だから多くの人に試してもらいたいという感覚です。私のように、最初は「健康に良いから」という理由で始めてもらうのも良いと思います。いつの間にかきっと日本茶の美味しさに気付いていただけるはずです。
日本茶は最も身近なスーパーフード
日本茶 (煎茶) は毎年200以上のがん予防に関する研究成果が公表されており、これだけの数の研究がおこなわれる食品は他に例がないと言われています。COVID-19関連でもインドや奈良県の大学の研究報告で日本茶が健康に良いと少し話題になりましたが、日本茶(煎茶) の何が健康に良いのか、期待される代表的な健康効果を見てみましょう。
・抗酸化作用
茶葉に含まれるカテキン、ビタミンCが体内の酸化を抑えて組織の老化を防ぎ、免疫力を高く保つ
・がん予防・抗がん作用
カテキンが発がん開始段階の抑制、発がん促進・進展段階の抑制、がん細胞のアポトーシス促進、がん細胞の転移抑制、がん組織での血管新生抑制など
・抗動脈硬化
カテキンによる血中HDLコレステロールの上昇とLDLコレステロールの吸収抑制と酸化抑制
・血圧上昇抑制
カテキンによるACE活性抑制
・抗菌作用
カテキンが腸内細菌善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)に対しての殺菌作用は弱く、悪玉菌(クロストリジウムやブドウ球菌など)に対しては強い作用、ピロリ菌、O-157、コレラ菌、黄色ブドウ球菌などに対しても殺菌効果を持つ、サポニンにも殺菌作用
・抗ウイルス作用
茶カテキンがウイルス粒子の表面に存在する糖タンパク質に結合して感染性を阻害、サポニンにも抗ウイルス作用
・血糖上昇抑制と抗肥満作用
デンプンなど糖質の分解を抑えてブドウ糖の生成を妨げ、ブドウ糖から作られる脂肪を減少させるため肥満が防止される
・抗アレルギー作用
メチル化カテキンの情報伝達系阻害によるヒスタミン放出抑制
・覚醒とリラックス
カフェインによる覚醒、中枢神経興奮作用と、興奮を和らげるテアニンによるリラックス作用で、適度な覚醒とリラックスが得られる
・認知症に関する作用
茶カテキン類が脳組織の委縮に対して効果、学習能力や記憶能力の低下を抑える、脳細胞の酸化によるDNA傷害抑制、テアニンによるグルタミン酸放出抑制
(参考文献:日本茶インストラクター講座 第2巻NPO法人日本茶インストラクター協会 2013年 / 日本茶のすべてが分かる本 NPO法人日本茶インストラクター協会 2012年)
日本茶はかつて薬として飲まれ、「保健機能食品」とも呼ばれているように、主な健康機能だけでも上記のように沢山あります。他の食品の健康効果と同様、依然として研究が進められているものなので、全ての効果が確実に約束されるものではありません。しかし、美味しく手軽に摂取できる日本茶がこれだけ健康効果が期待できるとあらば試さないという手はありません。
皆さまご存知のとおり、何か一つを取り入れることで健康になれるということはないので、お茶だけ飲んでも健康にはなれません。添加物や加工食品を避けて糖質を控えたり、プラントベースな食材や発酵食品を取り入れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスを減らし休養を取ることなどいろいろな側面がある中で、その一つとして日本茶も取り入れていただきたいと思います。
文・写真/正垣克也
カフェ「お茶と食事 余珀」店主、日本茶インストラクター。茶道と日本茶、オーガニックでプラントベース なライフスタイルをゆるりと発信中。お店では身体にやさしい食事やお茶、リラックスできる空間を提供する。
Instagram:@shogakik