幸せオーラあふれる北欧の5月|芳子ビューエルさん

デンマークの「ヒュッゲ」をはじめ、これまで北欧のライフスタイルを日本に紹介してきた芳子ビューエルさん。心身の健康を叶えるうえで欠かせない「ウェルビーイング」について考えます。

私が今まで北欧の国々を訪問している中で、全体的に北欧の人々に『幸せオーラ』を感じられるのが、5月です。

春の遅い北欧諸国でも5月になると緑が眩しくて、あちこちに花が咲き始めます。まるで木々の緑の葉が喜びに輝いているかのように見えます。

 

タクシーに乗っても普段は無口で仏頂面をしていることの多い運転手たちの表情は明るく、楽しそうに話しかけられる確率が上がります。

レストランやカフェでもまだ少し肌寒いのですが、皆外の席があればそちらを選択して、太陽の光を全身に浴びて会話を楽しむ姿がみられます。

昼食どきの公園では芝生の上に寝転がって気持ちよさそうに目を閉じてリラックスする姿が多く見られます。クロッカスやチューリップ、ヒヤシンスなどが咲き始め、北欧の庭や公園が色とりどりの花で彩られます。

 

また昼間の時間が伸びて日照時間が増えるので、夕食の後の時間もとても大切です。夕食の後片付けはそのままに、まだ陽があるうちに外の空気を満喫しようと散歩を楽しむ人々も多くみられます。

 

北欧のように冬が長く日照時間が短い地域では「季節性情動障害(SAD)」といううつ病の一種が見られることがあります。SADは特に冬季に光が不足することで発症しやすく、症状としては気分の落ち込み、エネルギーの低下、過食または食欲不振、睡眠障害などがあります。

太陽の光はセロトニンという神経伝達物質の生成に寄与します。心理的な安定にはとても重要です。太陽の光が少ない環境だとセロトニンの生成が減少し、気分に影響を与える可能性が高まります。

 

フィンランドの友人の家では冬場は毎朝起きて朝食を食べるときに、女優ミラーのような装置を使って、光を全身に浴びるよう努力をしていたのを思い出します。私が訪れた時には昼間の日照時間(と言っても太陽は顔を出さないで、厚い雲の中)が3時間あるかないかでした。短期間の訪問でしたが、朝食をとっていてもよくキャンドルを灯す文化なので、時々夕食をとっているような錯覚を起こした記憶があります。

北欧デンマークのHYGGE(ヒュッゲ)やスウェーデンのFIKA(フィーか)などの概念は、寒い冬の長い夜を心地よく過ごすための工夫を反映しており、それによって北欧の人々のウェルビーイングをより良い状態に保っているのだと思います。

 

みなさんも北欧へ旅をするチャンスがあれば、春ないし初夏をおすすめします。

春の到来を祝う祭りやイベントも多く、特に「バルバラ祭り」や「メイデー」が盛大に行われますので、単純に観光というより、人々の『幸せオーラ』も肌で心地よく感じていただけると思います。

写真・文/芳子ビューエル
株式会社アルトスター・株式会社アイデン 代表取締役。ウェルビーイングアドバイザー。北欧流ワークライフデザイナー

1998年にJERTOから派遣されて以来北欧とゆかりが深く、デンマークのライフスタイル「ヒュッゲ」をいち早く日本に紹介。テレビや雑誌でも、ヒュッゲの第一人者として日本での取り入れ方を紹介しているほか、世界幸福度ランキングにまつわる「幸せ」についての各種講演なども行う。その後コロナ禍を経て、各個人の心の健康や心理的な満足、そして社会的に良好な状態にあることが重要だと考えるようになり、「ウェルビーイング」の概念に共感。「ウェルビーイングアドバイザー」としての活動も開始した。著書に、『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』(大和書房)、『fika(フィーカ) 世界一幸せな北欧の休み方・働き方』(小社刊)、『経営者のゴール~M&Aで会社を売却すること、その後の人生のこと~』 (あさ出版)など。

https://yoshiko-buell.com/

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