意外と知らない日本茶のこと Vol.4

全6回連載の第4回目です。第1回はお茶と健康のこと、第2回はお茶と水のこと、第3回は煎茶の淹れ方について紹介してきました。
今回も淹れ方について。連載はまだ続きますが、たぶんこれで「淹れ方」については最後です。
自分で日本茶を淹れて気軽に楽しんでもらいたい、という想いがあるためどうしても淹れ方についての記述が長くなってしまいます。

かつての自分がそうであったように、日本茶の違いも淹れ方も良く分からないし適当だし、そんなにわざわざ買って時間を作って飲むまでもないのでは……と思っている方がいたらもったいないので、ぜひこれをきっかけに試していただきたいと思います。

今回は、前回の補足と煎茶以外の基本的なお茶の淹れ方について書きたいと思います。
まずは煎茶の淹れ方について少し補足です。

 

深蒸しのお茶

前々回、普通蒸しと深蒸しのお茶について書きましたが、その「深蒸し」と呼ばれるお茶の淹れ方についてです。茶葉が細かい分、成分が浸出しやすくなっているため、浸出時間を短くします。通常の煎茶が60秒前後としましたが、深蒸しの煎茶は30〜40秒程度を目安にしていただくと良いと思います。

手返し

深蒸しの煎茶は茶葉が細かくなっているため、急須から茶葉が出てきます。茶葉をどれだけ出すか、によってお茶の濃さを調整できます。

注いでいる急須の口を上げて、手を返すようにして注ぐのを中断し、また注ぎ始めるという注ぎ方が「手返し」です。簡単に言うとお茶を一度で注ぎ切らずに、何度かに分けて注ぐということですが、深蒸しの煎茶を淹れる際の濃さを調整するのに有効です。

私は手返しをして茶葉を出し、とろっとした濃度感を味わうのが深蒸し煎茶ならではの楽しみ方だと思っていたので、以前は一煎目から手返しをして淹れていました。

しかし、一煎目はあえて手返しをせずにゆっくりと注いで、二煎目以降で手返しをして一煎目と二煎目のコントラストを楽しむ、という淹れ方を鹿児島県知覧の農家さんから教えていただいてからは、一煎目は手返しをせずに二煎目以降で手返しをするという淹れ方に変えました。

こちらも好みなので一煎目から手返しをして注いでも、ずっと手返しをせずに注いでも良いと思います。

また、普通蒸しや浅蒸しと呼ばれる葉の形状を留めた煎茶で手返しをしても茶葉は出てきませんが、急須の角度や浸出液の出方が変わるため、やはりお茶を調整することができます。

個人的には深蒸し以外の煎茶に関しては、手返しはせず基本的にはゆっくりと急須を傾け、できるだけゆっくりお茶を注ぐようにしています。状況によっては少し濃さを出したい時に、途中から少し角度をつけて注いで調整することもあります。

 

最後まで注ぎ切る

前回書いていなかったポイントの一つです。基本的なことですが、お茶は最後まで注ぎ切ることが重要です。急須の中にお茶の浸出液が残っていると、茶葉がずっとお湯に浸かっている状態になり、苦みや渋みが出てきてしまい、次に淹れる時の味に影響してしまいます。

 

急須の後ろを軽く手の平でたたいて、茶葉を急須の真ん中に戻す

これも前回書いていなかった細かいポイントの一つです。お茶を注ぎ終わると茶葉が急須の口の方へ寄っていることがありますので、その場合は急須の後ろ(注ぎ口の反対)を軽く手の平でたたいて、茶葉を急須の真ん中に戻すようにします。

そうすることで、茶葉が一カ所に固まって蒸れて成分が浸出するのが防げるとともに、次にお湯を注ぐ際にまた茶葉が広がりやすくなります。

茶葉を急須の真ん中あたりに戻してから、もう一度残っている浸出液を注ぎ切るように茶碗に注いでみると、意外とまだ残っていることに驚きます。一度で最後の一滴まで注ぎ切るのはなかなか難しいです。

これから冷たいお茶が美味しい季節になるので、冷茶の作り方も以下、追加させていただきます。

ボトルで作る冷茶

茶葉 15 ± 5 g
水 750ml
抽出時間 冷蔵庫で3-8時間

深蒸しの煎茶は抽出されやすいので3時間前後でも大丈夫ですが、浅蒸しや普通蒸しと呼ばれる煎茶の場合は、可能であれば冷蔵庫で一晩置くと良いでしょう。
飲む前にボトルの上下を逆さまにしたり軽く振ったりして成分を均一にします。水の場合は振っても苦みや雑味がでませんが、お湯を使う場合は振らないことをおすすめします。衛生上の観点から抽出し終わってから24時間をめどに飲み切るようにしましょう。

 

急須で淹れる冷茶
氷水もしくは水出しで濃厚に。

茶葉 10~15 g
水 20~50ml
抽出時間 3-5分

玉露やかぶせ茶など旨みを味わうお茶に向いています。
こちらはゆっくり時間が取れる時におすすめです。二煎目以降はお湯で淹れても楽しめます。

 

濃いめに淹れて急冷

茶葉 5g
水 120-130ml (90~95℃)
抽出時間 90秒

氷を沢山入れたグラスに注ぐ。必要に応じて氷を追加します。
ボトルで作る水出しの冷茶とは異なり苦みや渋みも味わえます。

煎茶以外によく飲まれる日本茶のおすすめの淹れ方の目安
これらに関してもやはり袋におすすめの淹れ方が書いてあれば、まずはそちらを試していただくのが良いと思います。

 

ほうじ茶

茶葉 4g (体積が大きく軽いのでティースプーン3杯くらい)
水 300-350ml(100℃の熱湯)
抽出時間 30秒

香りを楽しむお茶のため、高い温度でさっと淹れます。
一般的には一煎で終わりとされていますが、家で飲む分にはお好みで二煎目を淹れるのもありだと思います。

 

紅茶

茶葉 3g (ティースプーン軽く2杯くらい)
水 200-250ml(100℃の熱湯)
抽出時間 2~4分

香りを楽しむため、高い温度で抽出します。
こちらも一般的には一煎で終わりとされていますが、二煎目も出ますのでご自宅で楽しむ分には二煎目を淹れても良いと思います。

 

玄米茶

茶葉 6-7g(ティースプーン軽く3杯くらい)
水 300-350ml(90℃)
抽出時間 30-60秒

香ばしさや煎茶のすっきりした味わいを楽しむため高めの温度で短めに淹れます。
玄米が重いため、他のお茶に比べて少し重量があります。

 

抹茶

茶葉 2g(ティースプーン1杯くらい)
水 60-70ml (80-85℃ )
茶筅で点てたいだけ点てる

抹茶は抹茶篩でふるうか、茶こしを使って抹茶を濾します。
少し手間ですがこの工程があることで、ダマになりにくく泡立ちも良くなります。
抹茶はお湯に溶けておらず攪拌されているだけなので、時間が経つと沈みますので要注意です。

呼吸をととのえ、力を抜いて茶筅を前後に振りつつ、左右に動かします。
茶筅をぐるぐるとは動かしません。
最初は下の層、真ん中の層を点て、最後は表面に。
表面は細かく前後に振り、最後にひらがなの「の」の字を書いて茶筅を引き上げます。

抹茶は茶葉の浸出液ではなく茶葉を石臼で挽いたものですので、茶葉の栄養がまるごと取り込め、小腹がすいた時にもおすすめな日本のスーパーフードです。

日本茶の保管方法

日本茶を変質させる原因とされているのは、

①酸素 ②湿気 ③温度 ④光 (紫外線) ⑤香り  の5項目です。

できるだけ酸素や湿気に触れない、遮光性の高い容器に入れ、温度が高くならないところ、香りが移りにくい環境で保管することをこころがけてください。お店で売られている茶葉のパッケージは上記の5項目を避けられる素材の物が選ばれていて、脱気がしてあったり窒素置換がされていたりします。

 

半月から1か月をめどに飲み切る

できれば一週間から10日で飲み切れる量を小分けにしてすぐ飲めるように茶缶などで保管しておき、残りは別の袋や茶缶などで保管して開け閉めをしないようにできれば理想的です。

可能であれば低温で一定の温度が保たれる冷蔵庫で保管すると良いとされていますが(4℃くらいが良い様です)、以下の点に注意が必要です。

冷蔵庫に保管する際の注意点

  • 匂い移りに注意する
  • 結露しないように冷蔵庫から出して2から3時間(夏場は半日)してから開封する

 

以上、基本的な淹れ方の個人的な目安を書いてみましたが、あくまで目安なので茶葉によっても個人の体調や好みでも美味しい淹れ方は違ってきます。これを機に自分でも気軽に日本茶を淹れてみよう、と思ってくださる方が一人でも増えたら嬉しく思います。

 

日本茶は茶葉と急須とお湯があれば飲めますし、一回あたり5g前後で、煎茶はだいたい三煎は飲めますので、実はコーヒーよりも手軽で経済的だったりします。

コーヒーを習慣的に飲まれている方は多いと思いますので、選択肢の一つとして日本茶も増やしていただければお家時間が長くなりがちな今日この頃を少し豊かに、健やかに過ごしていただけると思います。こんな時だからこそ日本茶がおすすめです。

 

文・写真/正垣克也

カフェ「お茶と食事 余珀」店主、日本茶インストラクター。茶道と日本茶、オーガニックでプラントベース なライフスタイルをゆるりと発信中。お店では身体にやさしい食事やお茶、リラックスできる空間を提供する。

Instagram:@shogakik

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