日本では年末年始というと、ほとんどの人にとって、特別感がある時期だと思います。
大掃除をして気持ち新たに新年を迎えるわけで、除夜の鐘に始まって、初詣や親戚や友人との集まりなど、賑やかな時期です。
スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランドなどの北欧諸国では、大晦日の夜に花火が打ち上げられて、友人や家族と一緒に盛大なパーティーを開きます。特にスウェーデンでは、テレビ番組で新年を迎える瞬間を楽しみながらカウントダウンをします。コンセプト的には日本の「ゆく年くる年」のような感じですが、もっともっと賑やかです。
昔デンマークの友人が日本に来て、年末年始を私たちと過ごした時、特に大晦日の除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べたりした時に、デンマークにいる家族に電話をしました。そして
「今までの人生の中で一番静かな年越しをしているよ!」とその家族に話しているのを聞きました。
話によると、パーティーはかなりワイルドだということです。
ノルウェーの一部地域では、新年を迎える前に火を焚いて、仲間と共に温まる習慣があり、夜中までそのパーティーが続くことも多々あります。
この時期の特別な食事としては、ノルウェーなどでは大晦日に伝統的に馬肉やジビエ料理を食べます。
馬肉を食べるというのは、欧米では珍しい習慣だと思います。
また北欧諸国ではスモークサーモンやニシンなどのシーフードのマリネが、特別な食事の際、よくメニューの一つとして上がります。
面白いのは、フィンランドでは1月1日にアルミニウムを溶かしてその形を占うという伝統的な儀式があり、形によって未来を占うとされているので、日本でいうおみくじのようなものを楽しむ習慣があるそうです。
これは私自身見たことがないので、ぜひ一度見てみたいと思います。
気温も低く、夜が長い北欧です。体を温める目的としても、伝統的によく飲まれているものがあります。
呼び名やスペルはちょっと国によって異なるのですが、グロッグという飲み物が好まれます。
これはホットワインにスパイス(シナモン、クローブなど)やドライフルーツ、アーモンドなどを加えた飲み物で、クリスマス時期からよく飲まれます。ワインは赤でも白でも構わないようです。
以前北欧の家具の会社の代理店をしていた時、世界大会があり、そこでデンマーク人の社長が世界中のスタッフ全員に飲ませたいということで、このグロッグを用意してくれたのですが、香りも強く、とにかくめちゃくちゃ甘かったのが記憶にあります。暖かいので、スパイスの香りも立って、日本人にはあまり馴染みのない飲み物で、好き嫌いが分かれると思いますが、日本でいう甘酒のような位置付けです。
ノルウェーやデンマークではこの時期、クリスマスビールが発売されます。やはり通常よりも濃厚で、スパイシーな味わいです。
ホットブルーラというフルーツフレーバーのカクテルはフィンランドで年末に好まれるドリンクですし、デンマークにはアクアビットと呼ばれるスピリッツの一種もありますが、往々にスパイスやハーブが効いています。
なかなか年末年始を海外で過ごすというのは難しいかもしれませんが、もしもチャンスがあれば、海外の異文化の中で大晦日と元旦を迎えるというのも思い出深いものになるのではないでしょうか?
文/芳子ビューエル
株式会社アルトスター・株式会社アイデン 代表取締役。ウェルビーイングアドバイザー。北欧流ワークライフデザイナー
1998年にJERTOから派遣されて以来北欧とゆかりが深く、デンマークのライフスタイル「ヒュッゲ」をいち早く日本に紹介。テレビや雑誌でも、ヒュッゲの第一人者として日本での取り入れ方を紹介しているほか、世界幸福度ランキングにまつわる「幸せ」についての各種講演なども行う。その後コロナ禍を経て、各個人の心の健康や心理的な満足、そして社会的に良好な状態にあることが重要だと考えるようになり、「ウェルビーイング」の概念に共感。「ウェルビーイングアドバイザー」としての活動も開始した。著書に、『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』(大和書房)、『fika(フィーカ) 世界一幸せな北欧の休み方・働き方』(小社刊)、『経営者のゴール~M&Aで会社を売却すること、その後の人生のこと~』 (あさ出版)など。



