高層ビルとアスファルトに囲まれた東京都心部。次々と再開発が進み、銀杏並木の伐採もささやかれる外苑前。土をみることも少ない場所に、長年放置されていた1500㎡の国有地。
畑、コンポスト、間伐材や竹などを使い、都市と自然、人と土の繋がりを取り戻す場所として、東京でもできる循環と共創の新しいモデルの実験場「原宿はらっぱファーム」(通称:はらはらファーム)があります。

NPO法人コンポスト東京の代表理事で、(一財)都市農地活用支援センターのアドバイザーを務める美喜子さんが、この土地を見つけたのは2020年。根気強く渋谷区や財務省、国交省、農水省、町会などの官公庁への交渉を続け、「原宿はらっぱファーム」のプロジェクトを実現しました。

今までの活動を通じた繋がりや、はらはらファームの活動の熱意に共感・賛同する色々な方に応援され、素晴らしい展開となっています。

石ころがたくさんで、畑と呼ぶには程遠かった空き地を耕したのはつい先日、4月19日に開催されたオープニングイベントでした。そこからわずか3ヶ月でこんなにも豊かな畑に! トマト、茄子、ピーマン、ししとう、とうもろこしなど夏野菜たちが元気いっぱいに実り、食べきれないほどのケールや大葉なども。
お野菜たちの生命力に驚かされます。

オープンに誰もが参加できるはらはらファーム。近所の方も、老若男女が集っています。

人も自然界の一部
都心部にいると自然との繋がりが希薄になり、自然循環の中で生かされているということを忘れられがちです。
私たちは動植物の命をいただき、自然界の恵みの水や空気がなくては生きることはできません。


コンポストで私たちが出す野菜くずやカスなどの生ゴミや枯葉や紙ごみなどで堆肥をつくり、それを活用して野菜を育てて、頂く。
かつては当たり前だったそんな暮らしを思い出すことで、自ずと感謝心や命の尊さを学ぶことができます。
はらっぱファームの名付け親であり、「旅するコンポストhacorin 」の制作販売をする中尾直暉氏。コンポスト王子と呼ばれる中尾さんは、環境と微生物が共生し循環する暮らしを提唱し、それをデザインしています。

美喜子さんも中尾さんも、人が出すものは全て循環させることを目指しています。
日本は生ゴミのリサイクルが欧米や韓国に比べてもかなり遅れをとっているそうです。
都心でそんな気づきを得て、ひとりで始めるのは不安、という方にも試してみるきっかけをつくる場所にも。
土壌と身体は同じ

「原宿はらっぱファーム」の隣にある老舗のヘアサロン「TWIGGY,」。はらっぱファームを見下ろすTWIGGY.のビルにも、屋上菜園があり、2階のカフェではヴィーガンメニューも提供しています。
オーナースタイリストであり、タレントやモデル、ファッションリーダーたちから高い支持を得ている美容業界のトップランナーである松浦美穂さんも、この国有地が畑になったら……、と願っていたそうで、美喜子さんがこぎつけ許可を得たこのアーバンファームのスタートに涙して喜んでくださったそうです。
はらはらファームの一角には、TWIGGY.の畑でヘアマットというカットした髪を敷いて野菜を育てることをチャレンジしています。
髪の毛は重金属や重油、有害物質を吸うことで知られており、波打ち際に置いておくと、重油を吸ってくれるため海が綺麗になった事例もあったそうです。
髪の毛も自然に還ることができると考えられています。このように元気に野菜やハーブが育っています。
松浦さんは、大人が楽しむとともに、子どもが楽しみながら学び体験する場所を作りたいとずっと思っていたそうです。地球と人との循環を知り、人間が排出するものから地球とつながり、そこから肥えた土地ができ、農作物ができ、それを食べてまた排出するという循環をスマートに体感しながら学べる。その先には豊かな未来があると思い描かれているそうです。
TWIGGY.CAFEからは、はらはらファームが一望できますので、ぜひこちらも行かれてみてくださいね。

都心だからこそのトライアルの場として
ここでは、近くの布団やさんの布団の綿ごみを敷いて野菜を育ててみるふとん農法や、建築現場ででた石膏ボードを敷いて不足する土壌のカルシウム分を補給する試みを行っています。
石膏ボードに含まれる硫酸カルシウムが役立ち、土壌の団粒化を促す効果が期待できると言われているそうです。
それぞれのレイズベッドで野菜たちの生育状況と共に見守っています。
野菜によってよく育つもの、そうでもないものもあり循環と経過を見守るのもとても興味深いものです。

ここに来たら元気になる。
全てを畑にするのではなく、かつてはどこにでもあった”はらっぱ”の姿も残しているのも、あたたかさを感じます。
都心部では特に小さな土地にもすぐに建物が建つのが常、こんな”遊び”や”ゆとり”を忘れてしまいがちですよね。

はらっぱにはよもぎやルッコラ、どくだみやアザミなどが自生して、季節の巡りを感じさせてくれます。

豊かさとは何か?
そしていつでも、どこでも出来ないことはない。
そこに人とのつながりや、自然との繋がりがあれば……、
希薄になるそんな大事なことを、ここ原宿はらっぱファームで感じてみてください。

このはらっぱの管理委託の期間は1年間、2026年1月末までとなっています。
しかしそこで終わらせたくはない、ここに関わる誰もがそう願い、日々畑を愛でてお世話をしています。

写真・文/千葉芽弓(ちばみゆみ)
ベジフードプロデューサー/ Tokyo Smile Veggie主宰
「日本の伝統とナチュラルVEGANフードを未来に繋ぐ」をキャッチフレーズに、健康や環境、フードロスなど社会問題の解決や、食の多様性への対応のためのカフェやレストラン、宿泊施設の持続可能なメニュープロデュースや商品開発・コンサルティングならびに教育・普及啓蒙活動を行う。食を通じた復興ならびに地域創生事業、レシピ開発、食養生や食育・料理セミナーやパーティケータリング、ライター、メディア発信、イベント企画など幅広く活動している。
ホームページ:https://www.vegemiyu.tokyo/
Instagram:@vegemiyu
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