ハワイの夫婦「おひさまファームズ」徒然日記 Vol. 33

アロハ!ハワイの夫婦「おひさまファームズ」代表のヒデキこと山根英樹です。前半は私の記事、後半は妻ユキの記事になります。

 

今回はハワイ生活の中で感じるアロハな瞬間についてお伝えしたいと思います。昨今、コロナ禍以降に犯罪率が増えて、ホームレス問題も抱えるハワイですが、そんな中でも他者を思いやるアロハな瞬間があります。

 

先日、いつもサーフィンをする近くのビーチパーク駐車場での出来事。いつものように支度をして、波が良いので急いで海に入りました。2時間ほどサーフィンを楽しんで自分の車に戻ってきた時に唖然としました。気が急いていたのかトランクが開けっぱなしになっていました。

 

焦った僕は車内に置いていた免許証、携帯電話、家の鍵、車のリモコンキーなどが盗まれていないか、と急いでチェックしました。幸運なことに全て残っていました。近くにはいつもの顔見知りのサーファーが何人かいたので彼らが見張ってくれていたのか、あるいはたまたま車上荒らしをする悪者がいなかったのか分かりません。こちらの駐車場では年に何度か車上荒らしが起きているので本当に幸運でした。

 

でもこんな事は本当に千載一遇です。ハワイに旅行でいらっしゃる方は絶対に車に貴重品を入れたまま車を離れないで下さい。また、外に出る時は必ずロックをして下さい。

次にホノルルではお馴染みの公共バスThe Busに道を譲った時の感謝のシャカサイン。日本では車に乗っていて道を譲ると相手の車がハザードランプを1回点けたりします。ハワイでもたまにそのサインを送ってくる車がいますが、通常は運転手が後ろのガラス窓越しに手を振って「ありがとう」の意思を譲ってくれた後車に伝えます。

 

これがホノルルのバスは道を譲ってくれた後車に対して、車体後部にある号車サインの電光掲示板に親指と小指を立てたシャカ、というハワイの「ありがとう」という図柄のサインと共にMAHALO(ありがとうの意味)と交互に表示をします。こんなところにハワイの粋な計らいを感じます。ちなみにハワイではクラクションをほとんど聞かないし、幅寄せなどの嫌がらせはもちろん、煽り運転のような行為もほとんどありません。そんなところがハワイのアロハ精神なのだと思います。

(写真:www.aloha-street.comより)

次号に続きます……ここからは妻ユキの記事をお楽しみ下さい。

 

―――――――――――――――――――――――

 

夫ヒデキに引き続き、おひさまファームズのユキです。疫病騒動が起こる前の数年間、ヒデキと私はホノルルの家を空けてロンドンに暮らしていました。私たち夫婦はそれぞれに引越しの多い人生で、夫婦合わせるとその回数は50回以上にものぼります。ここ数年は落ち着いていますが、今回はロンドンに渡った時の話を書こうと思います。

国家をまたぐ個人での引っ越しは、ビザの問題なども含めて途方に暮れるほど大変なものです。くだんのロンドンに関しては、部屋も決まっていない状態での渡英でしたので、イギリスの空港では大荷物共々私たちをホテルへと運んでもらうためにハイヤーを予約していました。そのハイヤーの運転手さんは特有のスーツに身をくるんだ伝統的な英国紳士で、南の島から到着した私たちを終始丁寧に扱ってくれました。そして小一時間の道中、最新の国内事情を真摯に伝えてくれたのです。

イギリスでの写真を見返していたところ、イギリス発の健康志向ファストフード店「レオン」の美しい紙袋を見つけました。オーガニック及びプラントベース、グルテンフリーなどを多数扱っています。

「イギリスへは初めてかい?」まずは運転手さんが我々にたずねました。ヒデキはそうだと答え、私は10代の頃にしばらく暮らしていたため、「30年くらい前だけど、住んでいたことはある」と答えました。すると彼は嬉しそうに、「あの頃は本当にいい時代だった」と言った後、「でも、当時のイギリスはもうどこにもないよ」と寂しげに付け加えました。その意味を尋ねると、「今やどこもかしこも移民だらけだ。かつての風景も、私みたいな古いイギリス人も風前の灯だよ。ここは私の国だったのに」と答えたのです。念のために書いておきますが、彼にとっては同じく外国人である我々への皮肉などではありません。

 

車を走らせながら、「ほらごらん、この辺りなんて読めない文字ばかりだろ? インド人街だよ」「そしてこっち、これはアラブ系。こんなのばかりだ」。そして彼は我々が住む予定の地域を知ると、「あそこは良い街だよ。昔のイギリスがまだ残っているから。ただ、今の住人はお金持ちのロシア系か中東の人間ばかりだ。モスクがあるからね」と告げました。ちなみに私たちはお金持ち云々ではなく必要に迫られての選択でしたが、確かに周囲は外国人富裕層でした。

 

また、運転手さんは私がかつてのイギリスを知っていることを嬉しく思ってくれた反面、心配もしてくれました。「あの頃とは治安が全然違うから、身の回りには気をつけるんだよ」と。そしてこう続けたのです。「今じゃ真昼にスマートフォン片手に散歩してるだけで、腕ごと切り落とされて盗まれるんだから」。私にはその衝撃的な表現が英国紳士特有のジョークにも聞こえたので、驚きを笑顔混じりに返しました。すると、「違うんだ。大袈裟に言ってるわけじゃないんだ。本当にそれが日常なんだよ。とにかく気をつけて」と、バックミラー越しに真顔で諭されました。

こちらは、そのレオンで「デリバルー」したもの。デリバルーとは、イギリス版のウーバーイーツ。ヒデキと二人分の朝食です。

それから数ヶ月が経った頃のこと。その運転手さんの訓示に類似した事件が、まさに起きたのです。それも近所に住む、知人フランス人夫妻の身に。腕を切り落とされるには至らずも、ただそれは、サバイバルナイフによる深い傷を二人共に負った時点で覆面犯の要求をのんだから。その要求とは、男性がつけていたアンティークのロレックスを渡すこと。犯人たちのアクセントや身体的特徴からその出身国等は判明していたものの、彼らが捕まることはありませんでした。そもそもイギリスの警官は、銃器で武装ができません。それがあえて逆用されている支配的な目的に、世間はようやく気づき始めましたが。

 

なぜ今この記事を書くのか、日本を愛する方々には伝わると思います。先日、命を奪われたアメリカの著名な愛国者青年が日本に伝道したように、一縷の望みはあるから。それは前回記事vol.32で書いた「戦後80年である令和7年は、まだ残されている」という文面に繋がり、同じ記事中の「防波堤」とは彼のような力です。悪意が蔓延る中にある希望は、見つかれば消されることを知りつつ覚悟の上で存在しています。そして無惨にも消されるなら、その希望はもはや消されることのない輝きをこの世に残します。それは、希望が覚悟を決めて蒔き続けていた種から、既に生まれ始めています。

写真・文/おひさまファームズ

ヒデキ
サンフランシスコ生まれ。東京育ち。ホノルル在住。広告代理店、旅行代理店、豪州クィーンズランド州政府、ハワイ州政府農務省、イギリスの経営大学院、ハワイの大手銀行勤務を経て独立。コンサルティング、不動産、米国農務省統計局の調査員の仕事の傍ら農業に従事。著書に「小さな会社でもできる海外取引」「グローバル職人になろう!」「漂流アロハ」「Drifted Aloha」などがある。

ユキ
絵と音楽と物語の創作家、宇宙の神秘を読む夢想家。米国の大学を卒業後、神授的な創作の仕事に長く携わる。芸術分野の他、神秘哲学、占星術、数秘術、各種卜術、古代史、神話学、宗教学、図像学、色彩学などに明るく、食や代替療法も探究。タロットチャンネル「雪猫座 Hawaii」をYouTubeにて開始中。

HP: www.ohisamafarms.com

この記事がよかったらシェアしてください

latest issue

veggy 最新号

Related posts

最新の投稿

カフェ&レストラン

都心を一望、秋の味覚を楽しむプラントベース・アフタヌーンティー(ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町)

紀尾井町といえば老舗の格式高いホテルが並ぶイメージを持つ方も多いと思います。バブル期に一世を風靡した赤プリこと旧グランドプリンスホテル赤坂の跡地に、2016年に新たにオープンしたザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町は、サ

Read More »