外苑前の交差点にある「CITRON」。フレンチベーカリー&サラダバーレストランのCITRONは、生まれつき心臓に病がある1匹の子犬が、殺されることを知り、ジョンが引き取った保護犬の名前から付けた店名です。
Ramond(レイモンド)=Lemon(レモン)=CITRON(シトロン)
フランス・パリで証券マンとして働いていたジョナサン(通称・ジョン)は、会社の駐在で2004年に来日。その後、ニューヨーク、シンガポールと駐在し、30歳のとき、フレンチブルドックのレイモンドとの出会いが彼の人生を変えます。
殺処分されるレイモンドを引き取り、一緒に暮らし始めたジョンはまもなくして動物の肉が食べられなくなったそうです。
そしてレイモンドと暮らす中、多忙な仕事で留守番させる時間が長く、もっと一緒に居たい。という思いから証券会社を辞め、日本にベジタリアンのカフェレストラン「CITRON」をオープンしました。
ジョンはこの店には誰でもが楽しく美味しく、心地よい時間を過ごしてほしいと願い、ベジタリアンや動物愛護などを前面に出すことはしていません。強制的であったり、制約のあることは誰しも心地よいものではなく、隔たりを生んでしまい、それは彼の描く愛の世界ではないからです。
お客様ひとりひとりとの対話を大切にするジョン。2023年12月に母国フランスに帰国し、日本には不定期で来日し、その際は必ず店頭に立っています。
オーナーのジョンにお話を伺いました。
CITRONのオープニングまでの歴史と想いを教えてください。
——CITRONは2015年7月、東京・青山にオープンしました。本物のフランスのライフスタイルを日本に取り入れたい、人々が集い、ヘルシーな料理を楽しみ、くつろげるカジュアルな空間を作りたいという思いから生まれました。
私は15年以上前にベジタリアンになり、2012年に東京に引越した当時は、美味しいベジタリアン料理を見つけるのが非常に困難でした。また、日本のフランス料理のイメージは「豪華」「高価」「気位が高い」という印象が強く、私が育ったパリのシンプルで楽しく、分かち合う(シェアする)本来の食事とは大きく異なっていると感じていました。
CITRONは、自然への敬意、動物への愛、本物の食材、そして温かいコミュニティ意識という私の価値観を反映したお店です。
料理へのこだわりを教えてください。
——CITRONでは、新鮮でナチュラル、そして主にオーガニックの料理を提供しています。
当店のメニューは100%ベジタリアン(ヴィーガンメニューもあり)で、フランスから輸入した食材を多く使用し、一部は地元産の高品質な食材を使用しています。すべて自家製で、添加物は一切使用していません。
野菜、ハーブ、スパイス本来の風味を大切にしています。
提供する料理のレシピのいくつかは私の母のレシピをもとにしています。
他は信頼するシェフのサイモンが店内ラボで丁寧に手作りしています。
私たちの目標は、身体に優しく、心も身体も両方とも満たされる、心地よいと感じる本物の(混ぜ物のない)料理を提供することです。
CITRONのこれからと夢を教えてください。
——CITRONは、誰もが安心してプランドベースのヘルシーな料理を楽しめる、居心地の良い空間として成長していきたいと考えています。
店内は42席と少ないですが、ケータリングやコラボレーションなど、さまざまな形での展開を目指しています。品質や精神性に妥協することなく、展開していきたいと考えています。
私たちは常に新しいレシピ、季節のメニュー、そしてより意識の高い良心的な食生活を促す方法を模索しています。また、ヴィーガンメニューも徐々に増やしていく予定です。
日本市場はまだ厳しく、ゆっくりですが、変化は必ず訪れると確信しています!
今、南フランスでホテル経営もしています。
1750年から1850年まで100年の間、シルク工場だったという古い建物を購入、ホテルとして生まれ変わらせています。その名前もCITRONのある大好きな青山の名前から、「Les Terres Aoyama」
こちらにもぜひ日本からもたくさんの方に来ていただきたいと思っています!
海外と日本のプラントベース市場の違いはいかがですか?
——欧米のプラントベース食品市場は変化が早く、革新的で、ファストフードから高級レストランまであらゆるものが揃っています。フランスでも当たり前にヴィーガンのメニューの選択肢があります。
日本の市場はまだ発展途上です。日本料理には多くの植物性食材が使われていますが、完全なベジタリアンやヴィーガン向けオプションはまだ限られています。
まさにそれが、CITRONが存在する理由です。植物性食品の選択肢がまだ少ない日本において、新鮮で美味しく、ベジタリアン・ヴィーガン料理を提供することです。
愛するレイモンドは持病の心臓が悪化し7歳の若さで虹の橋を渡りました。
しかしCITRONを通じて、この店が持続可能であり訪れる人たちが知らないうちにミートフリーでオーガニックな食事をとり、地球や健康にやさしい一歩となればきっと未来は明るいと信じています。
CITRONは2階の室内のカフェスペースもドッグフレンドリーなわんちゃん連れOKという、愛犬家には嬉しい希少なカフェです。
2023年12月、ジョンは南フランスのニームという街に拠点を移し、日本へは時々訪れ、来日時には明るい笑顔で店頭で接客をします。レイモンドのあとにもまた保護犬2頭と暮らし、フランスに連れて行っています。
コロナパンデミックの時は、Uberや近隣の方たちのおかげでそれほどの落ち込みはなかったそうです。しかし2024年から食材はじめ様々な値上げも重なり、日本の飲食店はとても大変な時代だと言います。
レイモンドへの愛そのものと言えるジョンにとって宝物のようなカフェ、それを守り続けるジョン。
好ロケーション、居心地の良い店内、フレッシュでおいしい料理がいただけるCITRONに、ぜひ足を運んでみてください。
CITRON
住所:東京都港区南青山2-27-21 セイリンビル1階2階
電話番号:03-6447-2556
営業時間:8:00-21:00(但し土日祝日は19:00迄)
写真・文/千葉芽弓(ちばみゆみ)
ベジフードプロデューサー/ Tokyo Smile Veggie主宰
「日本の伝統とナチュラルVEGANフードを未来に繋ぐ」をキャッチフレーズに、健康や環境、フードロスなど社会問題の解決や、食の多様性への対応のためのカフェやレストラン、宿泊施設の持続可能なメニュープロデュースや商品開発・コンサルティングならびに教育・普及啓蒙活動を行う。食を通じた復興ならびに地域創生事業、レシピ開発、食養生や食育・料理セミナーやパーティケータリング、ライター、メディア発信、イベント企画など幅広く活動している。
ホームページ:https://www.vegemiyu.tokyo/
Instagram:@vegemiyu
◆「Tokyo Smile Veggie」~トーキョーにベジなおもてなしを