11月16日に『BMC Medicine誌』に掲載されたレビュー論文により、赤身肉やハム・ベーコンなどの加工肉、卵などの動物性食品をナッツ類や豆類などの植物性食品に置き換えることで、心臓病や2型糖尿病(現代人に最も多い糖尿病のタイプ)の発症リスクが低下する可能性があることが明らかになりました。
このレビュー論文は、これまでに行われていた37つもの研究結果を包括的に分析したもので、デュッセルドルフにあるドイツ糖尿病センターのサブリナ・シュレンガー氏をはじめとする、ドイツの複数の機関の研究者らが共同で執筆。加工肉や赤身肉を植物性食品に置き換えた場合の健康上の結果に焦点を当てた、初めてのシステマティック・レビュー(系統的レビュー)でした。
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この論文によると、1日50gの加工肉を28〜50gのナッツ類に置き換えた場合、心臓病全体の発症率が27%減少し、肉を同量の豆類に変えた場合には23%減ることが明らかに。また1日50gの加工肉を1日10〜28gのナッツに置き換えると、2型糖尿病の発症率が22%減少。さらに1日1個の卵を25gのナッツに置き換えることでも、心血管疾患のリスクは17%低下しました。
加工肉や赤身肉を植物性食品に置き換えることで生まれる健康上の利点の理由についてまでは、この研究では掘り下げられていませんが、肉には飽和脂肪酸が多く含まれているため、それが心血管疾患や2型糖尿病のリスクを高める原因になっていると考えられています。また植物性食品には食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質、ファイトケミカルなどの健康に役立つ栄養素が豊富に含まれている一方で、加工肉はナトリウムや硝酸塩、亜硝酸塩が多く含んでいることも理由として考えられています。
シュレンガー氏は今回のレビュー論文の結果について、「単一の研究結果だけではなく、このテーマに関する利用可能なすべての研究論文を体系的に要約したものであるということが、このレビューの最も優れた点です」とCNNの取材に対し話しています。
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しかしThe Guardian誌によると、ケンブリッジ大学MRC疫学ユニットのニタ・フォルヒ教授(栄養、糖尿病、肥満の専門家)は、このレビュー論文が乳製品を種類によって区別していないことを欠点として指摘しています。
フォルヒ教授は、ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品は健康に良いということを示す証拠がすでにいくつも存在していることを主張し、加えてこの研究が、赤身肉や加工肉を魚、鶏肉、卵などの他の動物性食品に置き換えた場合に生まれる健康上の利点についても調べていないことについても言及。「研究者たちは、さらに質の高い研究を求めています」と付け加えました。
しかしその上で、「より詳細な研究結果が出るまでの間にも、私たちは健康と環境に悪影響を及ぼす可能性のある赤身肉や加工肉の摂取量を減らすことに取り組むのは賢明だと言えます」と話しました。
さらなる研究の余地がありそうな今回の発表内容ではありますが、フォルヒ教授も言っているように、普段赤身肉や加工肉を食べている人がまずその量を減らしてみるには、十分なきっかけとなりそうです。
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-03093-1
文/西田宏次朗