恵比寿駅から徒歩5分ほどに位置する、オーガニックレストラン「キッチンわたりがらす」。
人と地球にやさしい料理をテーマに、オーガニックや自然栽培、自然素材を使い、真心をこめて作ることを理念に2008年にオープンし、早創業17年。
そんな歴史あるレストランが新たに新業態として、無農薬の国産米粉を使用したパンやマフィン、スコーン、クッキーなどの焼き菓子を揃えたグルテンフリーベーカリーを新たにオープンしました。
その名も「Organic junkie」。
相反するワードが並ぶキャッチーな店名も興味をそそります。
「みんなが大好きなパンから、おいしく食べつつ農を考え、日本の水田を守り、さらにそれが環境を守ることに繋がる」、今回は、そんないい循環ももたらす素敵なお店をご紹介します。

こちらは有機JAS認証の工房でつくるこだわりの小麦を使わない、天然酵母のオーガニックブレッドたち。
カウンター越しに並ぶのは、国産オーガニック米粉や雑穀を使ったグルテンフリーパンは、小麦、添加物、化学調味料、白砂糖、冷凍品を使わないパンたちで、玄米、ひよこ豆、まこも、コーン、ごま、チョコなどヘルシーで魅力的なものばかり。
パンは卵や乳製品を使わないヴィーガン使用で、酵母には花酵母を使い、水や塩にもこだわって作られています。花酵母とは、花に棲む微生物から作られる酵母。この酵母を使うと、ふんわりとした食感や風味豊かなパンに仕上がるのだそうです。

いただいたチョコレート&そば、マルチグレイン、黒ごまのパンはどれもとってもおいしく、オーガニックのデカフェのコーヒーとの相性も抜群です。チョコ&そばは、チョコレートケーキを食べたべたような満足感もあり、甘いものが欲しいけれどヘルシーに満たされたいときにピッタリ!

1枚280円から買えるヴィーガンクッキーも、甘さの塩梅がよく、いちじく&ココナッツ、コーヒー&チョコチップ、紅茶&アーモンド&柑橘ピールと、どれも素材のおいしさの生きた、サクサクとした口当たりが心地よく美味しいクッキーです。
原材料は国産米粉、圧搾菜種油、無調整豆乳、きび糖、ライススターチなど、安心の厳選材料のみだから、まさにギルトフリーなおやつなのです。

こちらのランチの日替わりサンドウィッチも美味しそう!
恵比寿に行ったら、必ず立ち寄りたいお店ができました。

そしてオーナーの村上さんにお話を伺いました。

(写真:オーナーの村上さんご夫妻)
▪️キッチンわたりがらすの創業、オープンのきっかけを教えてください。
30歳過ぎに、思い立って創業しました。
実は料理学校で学んだことがなく、レストランに就職したこともありませんでした。
それまでは、気ままに旅をしたり、アルバイトとして飲食店で働いたり、時々仲間と雑誌を作り発行するフリーターとしてとらわれない生き方をしていました。
飲食をもっとまじめに始めようとしたきっかけは、結婚して子どもが出来た事から。
そこから急にスイッチが入り、初めて毎日飲食店で働く生活がスタートし、独学で様々な国の料理やベジタリアン料理にハマっていきました。
当時から自然環境や身体の事を考ええていましたし、オーガニックな食材を使う事、そして日本人に日本人の主食であるお米を食べてもらいたい! という思いはずっと変わらないですね。
もっとお米を食べて欲しいと考え、オーガニックロケ弁やランチの定食スタイルを創業当初からやってきました。
▪️なぜパン屋を始めようと思ったのですか?
Organic junkieの創業と、その経緯や想いを教えてください。
18年間オーガニックレストランを経営してきて、食べていただいた人たちや地球環境に微力ながら良い影響があったと自負しています。
そんな中、自分たちの何万倍も長生きをする地球の美しさを少しでも取り戻すには? と本気で考え始めました。
このまま、私たちの生活が変わらなければ、、子どもたちが受け継ぐ地球の環境は今より酷くなっているかもしれない
そうして行き着いたのは、やはり米でした。日本の耕作地の約半分が田んぼ。その田んぼで無農薬で米を育ててもらう。
そしてそのお米を粉にしてパンを作る。
パンはおにぎりに比べて、保存性もよく持ち運びがたやすいこと、
そしてパン好きな人たちが増えている世の中のニーズを踏まえてパン屋を開こうと。
恵比寿にあるパン屋一軒にとどまらず、その無農薬栽培の米粉パンを日本全国の食卓や給食に届けることを夢見ています。
その先には、田んぼが何枚、何千枚、何十万枚と広がります。その田んぼで化学的な肥料や農薬を撒かなければ、周辺環境の生物多様性の復活、河川や海の浄化に繋がっていきます。
ただ金銭を稼ぐだけの商売ではなく、田舎の田園風景がどこまで美しくなるかを中心に考えた商売を行いたいと常に考えています。

(写真:亀の尾という品種のお米を自然栽培で育てる田んぼ)
当然、パンの美味しさ、見た目、売り方、保存の仕方など、まだまだ研究していかなければいけないことはありますが…。
▪️パンのこだわりについて教えてください。

こだわっているのは、やはり原材料です。
パンの主原料は米粉。この米粉は小麦パン特有のグルテンが無い為、消化がしやすい。
そんな米もなるべく玄米を使用し、栄養価の高いパンを製造しています。
米粉だけでなくそば粉、タカキビ粉、ひよこ豆粉、トウモロコシ粉を全て自然栽培か無農薬栽培、有機栽培を使いミックスしています。
玄そばやタカキビ、ひよこ豆なども丸ごと挽いているため、食材本来のミネラルが沢山残っています。

水はオーストラリア製の特別な浄水器を通し、旨みとミネラルを残しています。
酵母は昔ながらの作り方で作ったイースト、カーネーションから培養した酵母、寺田本家の酒粕から起こした酵母など、今も色々と研究中です。

米粉だけでなく他の雑穀粉を入れることにより、滋味深く香ばしい独自のグルテンフリーのパンに仕上がります。
なるべく現代の食生活に寄り添えるように、洋食やイタリアン、中東料理などにも合うベーシックなパン作りをしています。
小麦を使わないパンは、私にとっては新しい分野。理想のおいしさを作り上げるために、今も日々探求を続けています。
▪️物販品のことや生産者さんとのつながりについてのエピソードなど教えてください。

生産者との繋がりは、キッチンわたりがらす創業前から20年近くかけて作ってきました。
毎月のように自ら足を運び、地方の生産者に会いに行ったり、様々な人の繋がりから紹介してもらったりもしてきました。
そして今では60か所ぐらいの生産者から、直接パンの原料となるお米などを送ってもらっています。

(岩手の生産者さんとの仲睦まじい交流をする村上さん(右))
Organic junkieでは、パンだけでなくオーガニック食材の物販もしています。
そのほとんどが「キッチンわたりがらす」から繋がりのある生産者による、顔の見える商品達です。

お店のワインセラーには、色んな種類の自然派&オーガニック・ワイン達がズラリと並んでいます。
オーガニックやベジ系のお店の中では貴重な、深夜0時までという営業スタイルも嬉しいかぎり。
お仕事帰りにふらりと一人で立ち寄り、美味しいクオリティの高いワインをオーガニックのタパス(ヴィーガン対応可)やパンをあてにいただくのもいいですね。

(写真:ヴィーガン対応の野菜のおつまみ)
夜遅くまで楽しめるので、インバウンドの方々にも喜ばれそうです!
通販で全国から購入できるように!

Organic junkieのパンたちは、年内にはECサイト/ストアーズでの通販と、近所にはuberでの配達を開始する予定だそう。

オーガニック食材屋やスーパー、宅配業者にも来年初旬には卸販売も開始予定するそうで、ご自宅ではもちろん、大切な人へのギフトにも良さそうですね。
天然素材のパンは翌日には固くなりますが、蒸せばふかふかもちもちの香り高さが甦ります。
噛むほどに美味しい滋味深い、食べて元気になるパンをぜひ味わってみてほしいです。

人や地域のつながりの大切さ
現在キッチンわたりがらすでは、子供食堂の取り組みもされています。
子供食堂はコロナ禍からスタートし、毎週土曜日になるとおにぎり弁当とお味噌汁を子供たちに無料で提供されています。
「やはりお米は日本人にとっては大切な主食、そして食材からとったお出汁の美味しさを子供の頃から知り、それを飲んでもらいたかった」と話す村上さん。米と出汁は食卓の原風景であり基本であると考えているそうです。
子供食堂を通して街の人達との繋がりを育んできたそうですが、何か災害があったときのためにも、この活動は大切だと笑顔で話されていました。

リーフレットに載っていた「キッチンわたりがらすの10ヶの約束」が世知辛い現代に信念の強さを感じます。
ファストフード、加工品の溢れる今、都心の恵比寿で志をもち、本当の意味での地球環境、人と地球上の動植物の未来のために、そして日本の大切な食文化と里山を守るために、生産者と消費者をつなぐ村上さんの愛に深く心を打たれました。
キッチンわたりがらす/Organic Junkieという素敵なお店へ、是非足を運んでみてくださいね。

Organic junkie
東京都渋谷区東3丁目23−3 猪瀬ビル
090-9615-6565
日月定休
営業時間:10:00〜0:00
instagram @organicjunkie.jp
キッチンわたりがらす
東京都渋谷区東3丁目24−14 エクセルハイム恵比寿 1F
03-3797-1515
休:日月
公式サイト watarigarasu.jp
写真・文/千葉芽弓(ちばみゆみ)
ベジフードプロデューサー/ Tokyo Smile Veggie主宰
「日本の伝統とナチュラルVEGANフードを未来に繋ぐ」をキャッチフレーズに、健康や環境、フードロスなど社会問題の解決や、食の多様性への対応のためのカフェやレストラン、宿泊施設の持続可能なメニュープロデュースや商品開発・コンサルティングならびに教育・普及啓蒙活動を行う。食を通じた復興ならびに地域創生事業、レシピ開発、食養生や食育・料理セミナーやパーティケータリング、ライター、メディア発信、イベント企画など幅広く活動している。
ホームページ:https://www.vegemiyu.tokyo/
Instagram:@vegemiyu
◆「Tokyo Smile Veggie」~トーキョーにベジなおもてなしを
https://tokyosmileveggies.com/



