日本語の中にはポルトガル語を語源とした言葉がたくさんあるのを知っていますか?
例えば、ボーロ(お菓子・ケーキ・ドーナツ)、ブランコ(横揺れ)、天ぷら(調味料)、かっぱ(マント)、チャルメラ(オーボエの類)、タバコ(煙草)など。
1543年に、日本に最初にきたヨーロッパ人はポルトガル人だと言われています。
鉄砲を持ってきたのもポルトガル人で、それ以降の日本の戦争の仕方がガラッと変わったと言われていますから、ポルトガルは日本ととても縁の深い国なのです。
私はそんなポルトガルに以前から興味を持っていました。
人々はフレンドリーで、気候も良く、物価もヨーロッパの中ではさほど高くない上、日本人の口に合う魚介類やお米を使ったお料理が多いという点も魅力でした。
またスペインが情熱的で躍動感があるのに比べて、ポルトガルの方が落ち着きがあって、ゆったりとできる印象だと長らくこちらに住んでいる人から聞いたことがあります。
行く先々に世界遺産の建物がきれいに保存されていて、日本の京都や奈良のような印象を受けます。
また大学生達は昔ながらの伝統的な儀式や風習を今でも守っていて、それがなんだかとても素敵に目に映ります。
10月はまだまだ暖かいと高をくくっていたのですが、実際にはかなり涼しくて、湿気がないせいか、日陰に入ると寒く、日向に出ると暑く感じる地中海地方特有の天候です。
今回そのポルトガルにはツアーに参加する形でやってきたのですが、中でも泊まってみたいと思っていたのが、ポサーダ(Pousada)と呼ばれるホテルで、ツアーのプログラムではそこに一泊するとありました。
ポサーダというのは、王宮や古城、修道院などを改修して宿泊施設にしたもので、伝統的な建築様式が使われていたり、長い歴史を持っていたりするので、当時の雰囲気を感じられるのも魅力です。
もともと古城や王宮なので、眺めが良い場所に建てられている場合も多く、美しい景観を楽しめます。そしてレストランもハイレベルです。
実はツアーの最中に怪我をしてしまい、ちょっとツアーから離脱をしてポサーダで2泊静養させていただきました。
私が泊まったのは、ポルトから北東約60キロのギラマインスというところにあるPusada Mosteiro De Guimaraesというポサーダで12世紀の修道院を改装したものです。1985年には国の建築賞を受賞している建物で、花崗岩の噴水が設置された中庭は午後のひと時を過ごすのに、とても素敵な静かな場所です。
建物の中には美しいポルトガルタイルが使用されていて、昔あった出来事がタイルの絵で語り継がれています。
夕暮れ時には屋根付きの花崗岩のバルコニーのソファに座って、街を見下ろしながら美しい空の色を楽しみます。
ホテルのランキングでは5つ星ですから、食事もサービスも徹底していますが、中庭にいても、バルコニーにいても、広い裏庭にいても、昔作られた噴水から静かに流れ落ちる水の音が聞こえ、それにとても癒されるから不思議です。
ここでの過ごし方は色々ですが、ほとんどの人が静かにこの環境と雰囲気を楽しんでいる様子が見てとれます。
一泊朝食付きで170ユーロ。約3万円です。今や都内のビジネスホテルでもそれくらいかかることを思うと、こんなスペースをオファーしてくれるポルトガル、素敵です。
他にもポサーダ・コンデイシャ・コインブラというところにも宿泊しましたが、ここもまた素晴らしいレストランを備えていて、一泊朝食付きで170ユーロ。
Well-beingな旅をしてみたいと思っていらっしゃるあなた。ぜひ一度ポルトガルのポサーダで数日過ごしてみませんか?
写真・文/芳子ビューエル
株式会社アルトスター・株式会社アイデン 代表取締役。ウェルビーイングアドバイザー。北欧流ワークライフデザイナー
1998年にJERTOから派遣されて以来北欧とゆかりが深く、デンマークのライフスタイル「ヒュッゲ」をいち早く日本に紹介。テレビや雑誌でも、ヒュッゲの第一人者として日本での取り入れ方を紹介しているほか、世界幸福度ランキングにまつわる「幸せ」についての各種講演なども行う。その後コロナ禍を経て、各個人の心の健康や心理的な満足、そして社会的に良好な状態にあることが重要だと考えるようになり、「ウェルビーイング」の概念に共感。「ウェルビーイングアドバイザー」としての活動も開始した。著書に、『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』(大和書房)、『fika(フィーカ) 世界一幸せな北欧の休み方・働き方』(小社刊)、『経営者のゴール~M&Aで会社を売却すること、その後の人生のこと~』 (あさ出版)など。



