ハワイの夫婦「おひさまファームズ」徒然日記 Vol. 9

 

アロハ!ハワイの夫婦「おひさまファームズ」代表のヒデキこと山根英樹です。前半は私の記事、後半は妻ユキの記事になります。今回はオアフ島で最近ようやく一部開通となった高架鉄道に試乗してきたので都市開発が農業に与える影響について考察してみたいと思います。

 

 

ホノルル高架鉄道(通称スカイライン)はオアフ島西部の新興住宅地のカポレイと空港近くのアロハスタジアム間の約18kmを結んでいます。2014年に島の西部から建設が始まり計画では2025年までに空港の東にあるMiddle Streetというバスターミナルまで、2031年までにダウンタウンの州議事堂の先にあるシビックセンターというバスターミナルまで開通予定です。当初の予定ではアラモアナ・ショッピングセンターが終点でしたが、こちらは現時点で未定となっています。

 

沿線にはホノウリウリという広大な農地の広がる土地があります。ここには第二次世界大戦中に日本人の収容所がありました。そしてさらに遡ること1840年代には私の時代小説「漂流アロハ」に登場する幕末漂流者の五右衛門と伝蔵が農地開拓をしました。かつてはサトウキビやパイナップルなどの大規模農業も行われ、近年ではモンサントなどの農地もありました。そしてこれからは新興住宅地の建設も予定されています。このように時代に翻弄された土地です。

 

 

私は現在、不動産の仕事にも携わっていますが、宅地開発と食料自給ということを考えた時にジレンマに陥ります。宅地開発をしなくては島の雇用も発生しないし、経済発展はない。しかしそうすると島に供給する農産物を生産する農地が削られ相反する状況となります。これからは不動産と農業、新しい形での融合が求められてくるかと思います。

 

ハワイの自給率は15%以下で米本土や他国からの輸入に依存しています。人口は144万人、毎日飛来し滞在する観光客を含めると常に150万人がハワイの島々にはいます。もし戦争や事故やストライキ、天災などでインフラが遮断されると島の人々の食糧は2週間で備蓄が尽きてしまいます。州としては現在の農業生産を2030年までに倍増するという計画を発表していますが、かなり困難な目標です。

 

西洋文明が入る前の1800年代は人口が20万人近くいたそうですが、なんと自給率は100%だったそうです。その昔、ポリネシア人が持ち込んだカヌー・クロップと呼ばれるタロ芋、さつまいも、パンの実、バナナなどを主食にしていました。それらの生産は徐々に細ってしまい、米国本土に輸出するためのサトウキビ、パイナップル、畜産、畜産飼料のためのコーン種子の生産が増えました。

 

 

今後、鉄道の沿線には住宅が増え、残念ながら農地が消滅していくかもしれません。私はこのハワイアンが昔から大切にしてきた農地を守り、現代のハワイの人たちの主食とも言えるお米(現在ほぼ100%カリフォルニアからの輸入)のための稲作を復活し、在りし日のハワイの主食だったパンの実(ブレッドフルーツ)の栽培ができればと思っています。次号に続きます……ここからは妻ユキの記事をお楽しみ下さい。

 

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夫ヒデキに引き続き、おひさまファームズのユキです。今回のお話は、前回の記事に関連しています。食について深く考える人は、生き方を大切にしているからこそだと思います。その生き方が有無を言わせない形で急激に変えられようとしていることを、ご存知の方も多いと思います。人間としての個性も創造も許されない「未来の都市計画」のことです。

 

私たちの住むオアフ島のホノルル市もまた、マウイ島はラハイナのあるマウイカウンティと同じく「スマートシティ」になる予定の都市です。こちらの人は「サテライトシティ」と呼んだり、「スーパーシティ」「15分都市」「C40 Cities」と名付けられている場合もあります。世界規模の巨大計画であるにも関わらず大手メディアはその詳細を伝えませんが、インターネット上では様々に公開されておりPDFでダウンロードできる資料等もあります。世界中でどの都市が参加しているかも調べることができ、日本では非常に多くの都市が既に名乗りを上げて動いています。車、旅行、衣類、食、家などの、個人における自由の制限についても明らかにされる中、英国オックスフォードのように市民の強い反対運動が続いている場所も少なくありません。

 

 

そんなオックスフォードに同じくマウイでも、日米プロジェクトを含むこの都市計画への反対が続いていました。だからこそ火災の大惨事が起きた直後から、現地の人々はラハイナの土地が奪われることを懸念してすぐさま発信を始めたのです。インターネットの接続もままならない中、著名起業家がいち早く対応したため、葬られようとしていた証拠も広く知れ渡ることになりました。

 

そして人々の憂慮は不自然なほど急速に現実となり、今まさに攻防や追及が始まっています。しかしあまりの理不尽さに怒りや疑問は日々深まるばかりで、米国本土からのジャーナリストやハワイ州選出の政治家トゥルシー・ギャバードなども現地入りして事の異常さを発信していますが、関係者の無言の辞任やトップの入れ替えという逃亡劇と共に権力側の沈黙は続いています。

 

 

それらの動きはまるで、自由のない未来の都市計画を前に、民衆にも、そしてマリオネット程度の権力側にも、既に自由などないことを了知しろと言わんばかりです。全ては夢想家の戯言ですが、時々こんなことを思います。自力では動けない僅かな蚕を飼うための街が完成する頃、この世には他にどのくらい、何が残っているのだろうと。そして、多くを消そうとする「真の目的」は何だろう、と。

 

正義があきらめて黙ってしまえば、いとも簡単に人類「を」望まない未来が訪れるはずです。それを本能と経験で知るラハイナの、マウイの、ハワイの、アメリカの、世界の良心は、真実から目を逸らさずにそれぞれの方法で立ち向かっています。

 

 


写真・文/おひさまファームズ

ヒデキ

サンフランシスコ生まれ。東京育ち。ホノルル在住。広告代理店、旅行代理店、豪州クィーンズランド州政府、ハワイ州政府農務省、イギリスの経営大学院、ハワイの大手銀行勤務を経て独立。コンサルティング、不動産、米国農務省統計局の調査員の仕事の傍ら農業に従事。著書に「小さな会社でもできる海外取引」「グローバル職人になろう!」「漂流アロハ」などがある。

ユキ

絵と音楽と物語の創作家、宇宙の神秘を読む夢想家。米国の大学を卒業後、神授的な創作の仕事に長く携わる。芸術分野の他、神秘哲学、占星術、数秘術、各種卜術、古代史、神話学、宗教学、図像学、色彩学などに明るく、食や代替療法も探究。タロットチャンネル「雪猫座 Hawaii」をYouTubeにて開始中。

HP: www.ohisamafarms.com

 

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