
Mind & Column
回復の食卓記 第三話「コマクサと泥団子」
コマクサという高山植物がある。生でみたことはまだないが、夏にピンク色の可憐な花を咲かせる。 コマクサが生息するのは、つよい寒風が吹くなかを礫(つぶて)と呼ばれる小石がはげしく移動する
コマクサという高山植物がある。生でみたことはまだないが、夏にピンク色の可憐な花を咲かせる。 コマクサが生息するのは、つよい寒風が吹くなかを礫(つぶて)と呼ばれる小石がはげしく移動する
朝いちばんに台所へ行き、昨日の味噌汁を温める。土鍋のふたをあけると、ふわっとたちのぼる深い潮の匂い。思わず遠い目になる。毎日嗅ぐ匂いなのに、なつかしくてたまらない。味噌汁を飲むとき、海を飲んでいるみたいだ
この春、はじめてふき味噌を作った。野菜をたびたび送ってくれる知人がいる。春には新聞紙にそっとくるまれた自生の山菜が少量届く。この前、ふきのとうが入っていた。触ると今にもくずれそうにほろほろしたつぼみは、天ぷらにするにはす
–生きるとは、変わること– 梅雨入りを控えたある日、高校時代からの友人たちと四人で集まった。高校時代は毎日会っていたのが大学時代は月に一度になり、それでもわりとこまめに会えている気がしていたの
– すれちがう春 – 夏に鎌倉に越してきて、長い冬がようやく背中を向け去り、待ちわびた春がきた。さいきんは雨風の日も多かったけれど、これが春を連れてくるのだと思うと今までにないほどわくわくした。 今朝散歩を
三月を迎え、長い冬の出口がようやく見えてきそうだ。鎌倉では凍てつく寒さは去り、海も風も空も春色をしはじめた。冬がくると「あーまた冬だ」と思うのに、春はなんど迎えても「あーまた春だ」とはならない。朝が何回きても嬉しいのと一