日本初! 装置メーカーが取り組むオーガニック社員食堂「en-kitchen」で<Meat Free Friday>

神奈川県川崎市に本社を構える伸和コントロールズは、半導体製造等に活用される精密温調装置の開発・製造・販売・メンテナンスを行っている会社です。

直接私たちの生活でその社名を耳にすることはありませんが、縁の下でその技術が活躍し、私たちの生活を支えてくれています。

伸和コントロールズは、社員が健康で高いパフォーマンスを発揮するために最高のインプットを、という想いで2018年4月からオーガニック社員食堂を導入しています。無農薬あるいは減農薬の野菜を使用。調理においては保存料や化学調味料を使わずすべて手作りでの料理を提供しています。

そして、2019年からは毎週金曜日を「Meat Free Friday」として、完全ヴィーガンの定食を提供することで、地球環境を考え、人と自然が共存する持続可能な社会へのアクションを取り入れています。

現代の暮らしを便利で豊かにしている半導体、その半導体の製造工場ではたくさんの電力を使用したり、廃棄物が発生するなど、どうしても環境へ負荷をかけてしまっていることは否めません。だからこそ日々の食事を通じて環境や社会の問題を考えること、少しでもその問題に貢献することを続けています。

伸和コントロールズの社員食堂の企業理念や社員食堂の取り組みについて、経営企画本部・広報課課長である向山優樹さんにお話しを伺いました。

"つながり”を大切に

オーガニック社員食堂の運営を受託しているのは株式会社el&s(代表 塚本サイコさん)。「社員食堂で最高の食事を提供したい」という伸和コントロールズの想いと「100%オーガニック」el&sのコンセプトが合致し、このご縁がスタートしました。

そしてオーガニック社員食堂は「en-kitchen」と名付けられています。

en-kitchenの”en”には、縁、つながり、また精密機器の開発・生産を行う企業ならではのエンジニアといった意味も包括しています。

この食堂から社員同士、家族、地域、お客様、環境や自然、世界の文化などあらゆるものとのつながりを感じてほしいという思いが込められているそうです。

en-kitchenの入口手前にはコミュニティスペースがあり、多様な書籍や雑誌がカテゴリー別に四方の壁に、そしてギターや楽器が並んでいます。

聞けば、2021年に就任した現社長の山本拓司さんは大の音楽好きなのだそう。

本棚には手に取りたくなるさまざまなジャンルの書籍がずらりと並んでいて、自由に読めるようになっていて、魅力的でした。

左:ミートフリーマンデージャパンの小城さん、右:伸和コントロールズの山本社長

そして、無類の音楽好きでご自身でも演奏をするため、このミートフリーの活動も提唱者であるポール・マッカートニー氏の影響も大きいのだそう。

社員食堂のホールにはグランドピアノがあったり、演奏会などの企画もしているそうです。

地域とのつながりを大切に、料理に使用する野菜には拠点と同じ川崎市麻生区にある明治大学の農学部の黒川農場の自然栽培や有機栽培の野菜を使用しています。同じ地域で活動する農家さんを知り、作物を食べることで、生産者とのつながりや地元の豊かさを感じることができます。

 

その他の野菜は神奈川県内からSHO FARMさん。ポランやGAIAといった自然食品卸から調味料も取り寄せています。こだわりの本物の調味料、食材たちのみというありがたいものです。

現在、食堂の利用者は毎日50~60人程度、日替わり2種の定食をオンラインで事前注文するシステムにしていることで、フードロス削減に努めています。オーガニック社食になってから食べ残しはほとんどなくフードロスゼロなのだというから驚きです。

このオーガニック社食、1食なんと350円なのだそう!! 福利厚生の手厚さ、羨ましすぎませんか?

とにかくおいしい!

外食でいただくミートフリーやヴィーガン 、昨今では簡易的なメニューも多くなっている傾向にあり、また”旨味”という面からもなかなか難しいものがあります。

訪問前に、シェフが研究して作られているとお聞きしておりましたが、筆者も長年このヴィーガン業界にいて、おそらく誰よりもさまざまなお店のヴィーガンメニューをいただいてきている舌を持つため、社食の定食にそこまでの期待はしていませんでした。

しかし、目から鱗、いい意味での裏切りと期待を大きく外す美味しさに驚きました。

自然な旨味、食材の生み出すコク、後味の心地よい余韻とキレの良さ、本物だということがすぐわかります。

ドレッシングも全て手作りでヴィーガン 。人参、豆乳マヨネーズ、大葉マヨ、玉ねぎなど常時5〜6種が並び、これらはミートフリーの日以外も毎日、定食につくサラダにその日の気分で選び自身でかけて食べることができます。

ご飯は小田原のめだかがいる綺麗な水で育つ「めだか米」のごはんです。

この日は麦をいれたご飯でしたが、ごはんもとっても美味しい。

ごはんは食べる人が、その日の気分で選ぶお茶碗に自身で好きな量をよそうのですが、ご飯茶碗は工場のある長崎の波佐見焼のものを使用。社食というと割れないものを使うところも多いですが、土の温かみを感じられる本物の伝統工芸の茶碗を使用しているところも素敵です。

いただいた春巻きは、持ち上げるとずっしり、お野菜やきのこ、春雨がたっぷりでジューシー、スープや副菜のクスクスとキヌアサラダも旨味があり、ヴィーガン でない方々にも満足のいく味わいです。味見をさせていただいたもう一つのメニューのベジハヤシライスもコクがありながらも重すぎないおいしさでご飯のすすむ味わいでした。

作り方や材料も掲示とInstagramで公開していて、安心な上に、ご家庭でも作ってみたいという声にも応える工夫をしています。

知念総料理長の想い

左から広報の水上さん、向山課長、知念料理長、el&s代表の塚本さん

知念料理長は、長く飲食業界、和食料理店で経験を重ねていた最中、コロナパンデミックにより生活を考え直すことになったそうです。

「飲食店で不特定多数の方へ料理を提供するのではなく、特定多数に本当に美味しいと思ってもらえる、からだにもよいものを届けたいと考えるようになり、実家のある多摩市にも近い伸和コントロールズの社員食堂の求人が目に止まりました。応募しようとした矢先、先手があり決まってしまったと聞き諦め掛かっていましたが、その方が試用期間で辞めたそうで、再募集が出た時には、自分のためだと直感しご縁を感じました」(知念料理長)

 

メニュー表をみるとラインナップの多さにも驚きます。現在は2人のパートさんで毎日平均50~60食を提供しているという知念料理長にお話を伺いました。

 

──ヴィーガンメニューを作るのは大変ではありませんでしたか?

最初は、引き継いだメニューをベースに作っていましたが、本やネットでレシピを調べて研究・試行錯誤を繰り返してきました。ジャンルにとらわれず、スパイスも色々揃えて和洋中、エスニックといろんな料理を作ってます。3ヶ月に一度、社食を利用する社員のみなさんにアンケートをとっていて、その声から改善したり、食べたいもののリクエストを取り入れています。

 

──人気のメニューは?

ベジビビンバやファラフェル、担々麺やミートソースなどの麺類はとても人気が高いです。

 

──ミートフリーフライデーの反響はいかがですか?

消化負担がかからない、ダイエットにもよく痩せた、おいしくて毎日食べたい、など嬉しい声も多いですが、反面まだやはりお肉やお魚の料理を好む人も多いことも否めません。

まだまだその意義や利点を伝える機会が足りないのかもしれませんね。これからもよりおいしいものを作って喜んでいただけるように精進していきたいと思っています。

 

今ではen-kitchenを利用する社員の方おひとりお一人の食の嗜好や好きな料理も大体わかってきている、と笑顔で言う知念さん。そんな社員の皆さんが喜ぶ顔を思い描き日々楽しみながら料理の幅を広げ、もっと美味しいものを作ろうと研究される姿勢に頭が下がります。因みに、今回取材をした私のレシピも「検索してよく見てます」とおっしゃっていただき嬉しかったです。

「社員食堂でミートフリーフライデー」の取り組みが2024年川崎市スマートライフスタイル大賞を優秀賞を受賞

昨年2024年には、川崎市とCC川崎エコ会議が主催する、CO2削減や地球温暖化対策に貢献する優れた取り組みを表彰する第13回スマートライフスタイル大賞で、伸和コントロールズのミートフリーフライデーが優秀賞を受賞しました。

 

https://www.city.kawasaki.jp/templates/prs/cmsfiles/contents/0000171/171883/houdouhappyou.pdf

 

私たち人間が週1 回だけ肉食を控えることで、地球温暖化を食い止め、かけがえのない資源を守り、多くの動物の命を助け、また自身の健康を促進することができるという主旨とその企業としての取り組みが高く評価されたそうです。

素晴らしいですね。

お話を聞き、そして食事を頂く中、このモデルケースがいろんな企業、全国に広まってほしいと心から思いました。

社員の健康のため、仕事の質の向上、組織の人間関係、地産地消で相互のつながり強化と助け合いや地域活性化などあらゆる面から、オーガニック社食とミートフリーの日や選択肢ができたら、きっと社会や地球も大きく変わっていくに違いありません。

伸和コントロールズ株式会社

https://www.shinwa-cont.com/

en-kitchen公式Instagram:@shinwa.controls

写真・文/千葉芽弓(ちばみゆみ)

ベジフードプロデューサー/ Tokyo Smile Veggie主宰

「日本の伝統とナチュラルVEGANフードを未来に繋ぐ」をキャッチフレーズに、健康や環境、フードロスなど社会問題の解決や、食の多様性への対応のためのカフェやレストラン、宿泊施設の持続可能なメニュープロデュースや商品開発・コンサルティングならびに教育・普及啓蒙活動を行う。食を通じた復興ならびに地域創生事業、レシピ開発、食養生や食育・料理セミナーやパーティケータリング、ライター、メディア発信、イベント企画など幅広く活動している。

ホームページ:https://www.vegemiyu.tokyo/

Instagram:@vegemiyu

 

◆「Tokyo Smile Veggie」~トーキョーにベジなおもてなしを

https://tokyosmileveggies.com/

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