世界のVeggy Peopleに聞く、食とライフスタイル(2) — ステフ・デイヴィス

ユタ州を拠点にするロッククライマー、ベースジャンパー、スカイダイバーのステフ・デイヴィス。世界的に最も注目される女性冒険家であるステフは、「個人のエンパワーメント(自信や力を与えること)」をテーマに、世界各地で講演会を行っている。 パワフルな活動家であると同時に、熱心なヴィーガンでもある彼女。厳しいパフォーマンスからすると意外とも思えるライフスタイルについて話を聞いてみた。ステフは自らの人生、ヴィーガンであること、そして自身の哲学について多くを語ってくれた。

Being That Person
「あの人」になること

最近は、ヴィーガンのクライマーが以前より増えたような気がするし、みんな結果的に良いクライミングができると言っていて、私はこの流れに貢献しているような気がするわ。例えば10年前だったら、共感されなかったことよ。昔、トレーニングに関する記事を書いている有名なクライマーがいたの。あるとき彼女が、「肉を食べるのをやめたら医師に肉を食べなさいと言われた」という記事を書いたの。誰もがその記事を読み、クライマーにとって肉が必要不可欠なものという認識を持った。私がヴィーガンになり始めた当初は、みんなに言われたわ。「あの記事覚えていない?」って。 ある意味、今、私はその「彼女」のような存在になろうとしているのよ。ヴィーガンであることが私にとって効果的に機能しているのだから、あなただって出来るはずよ、と言えるように。そして誰もが「ステフがやっているなら、私だって出来るはず」と思えるように。誰かが書いたトレーニングに関する記事を10年間も人々が忘れないでいるならば、私だって、たまたまヴィーガンであったという事実を伝えておきたいのよ。

The Myth
通説

ヴィーガンといっても実際はとってもシンプルな食生活を送っているわ。調理された商品は買わない。天然産物食品の棚に行って、玄米、キヌア、豆腐、野菜、大豆、レンズ豆、ナッツなどを買うのよ。ヴィーガンになる人が犯す最大の間違いは、彼らが自然食品を食べない、ということ。これが、ヴィーガンの食生活は力がつかないし栄養不足になるという間違った通説を作ってしまうの。ヴィーガンだけれど白いパン、白米、白い砂糖を食べ続けていては、力も出ないし結果的に体重を増やしてしまうだけでしょ。 私はヴィーガンだけれど、自然の食べ物を食べているだけ。気をつけていることと言えば、小麦、白米、精製された製品を食べないようにし、パンを食べ過ぎないようにしていることかしら。あとは、精製された砂糖、特にコーンシロップ(質の悪い人工甘味料)を食べないようにしているわ。糖分全般に関しては、3年間まったく摂取するのをやめたら今では好きでなくなってしまったわ。以前は中毒のようなものだったけれど。 私にとって難しいのは小麦。大好きだから。焼きたてのパンは凄く美味しいけれど、お腹の調子が悪くなるし身体的に弱くなってパフォーマンスが低下するの。今、アメリカでは無グルテン食が流行っていて、レストランですらグルテンを含まないメニューを選べるようになっているわ。でも反対に、ヨーロッパを旅している時は本当に難しい。どこに行ってもパンばかりで、しかもどれも美味しい。体質的に合わないというそれだけの理由で食べないようにしているから、旅がしにくくなってしまうのよ。そういう意味では、アジアはいいわ。米食なので。もちろん白米よりも玄米志向だけど。

Becoming Active in A Different Way
違う形で活動家になるということ

ヴィーガンでない人に、ヴィーガンという考えを紹介するのは結構難しいものよね。過去には、工場式農場の映像をそのまま、Face bookにアップしたこともあったわ。そうすると、ひどく怒って動揺した反応をする人がいたの。この反応は私にとっては違和感があったわ。だって動物消費の残酷な側面について知って、変わることを求められたら、何故それに対して怒りを感じるの? 何かについて悲しいと思ったら、変えようと思わないの?と私は思うから。 でも私が学んだのは、人によってはこの事実は見聞きもしたくないもので、結果的に攻撃的になってしまう、ということだった。 だから私はそのようなやり方で活動する、“強い”現状改革主義とは違うスタンスの活動家になろうと思ったの。もちろん他のヴィーガン活動家が過激な方法をとったとしても、その行動の裏にある動機はとてもよくわかる。でも何かを強く厳しく言い過ぎてしまうと、人ってそれに反抗してしまうものでしょう。ヴィーガンはいつも説教ばかりしているから聞きたくもない、と言われないように注意しなければならないわ。 だから私は、人間のある種の身勝手さに訴えることにしているの。動物について語るのではなく、まずは健康面でのメリットや運動能力について語る。共感できることから始めるの。精神性やスピリチュアリティについてなんて、興味や関心がないことの方が普通なのよ。でも、その人たちが自ら気づけるところまで導くきっかけを与えることができたら、あとは自然と変わり始めるでしょう。私自身そうだったから、わかるの。 活動家としての秘訣は、人々の利己心に訴えかけること、自分が模範となって生きること、そしてポジティブな情報を提供することで脅迫的にならないということね。ポジティブなことに対して、人は逆行しないのよ。美味しいヴィーガンのレシピを提供したり、ポジティブな行動をとるように励ましたりね。そうすることでヴィーガンというライフスタイルも少しずつ理解されていくと思うわ。

【Profile】

ステフ・デイヴィス/Steph Davis
アメリカ出身のロッククライマー、ベースジャンパー、ウィングスーツ・フライヤー。フリーソロ(ロープを使わない)クライミングを専門とするトップクライマーでもあり、世界で最も困難とされる山頂をフリーソロで制覇。熱心なヴィーガンとしても有名。現在、恐れをどう超越し、飛ぶことを通して自由と進化を発見することについて綴る2冊目の本「Learning to Fly」を執筆中。

【Interviewer & Text】

堀江里子/Satoko Horie
パリ生まれの日本人。パラインパクト/ヨガジャヤのマネージングディレクター。世界各国を旅し、土着の文化に溶け込むことを楽しむ家族の元で、国際人として育てられる。南極以外の大陸をすべて旅した彼女は、未だ見ぬ土地や人々に接し、全く新しいモノの見方を発見することを愛してやまない。常に新しい領域や限界にチャレンジする人生の探求者としての日々を満喫している。
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雑誌veggy(ベジィ)バックナンバーVol.12より抜粋

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